函館地方裁判所 昭和40年(ワ)81号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕そこで被告の抗弁につき判断する。
<証拠>によれば、被告は昭和四〇年三月二日訴外佐々木三市郎に対し、助宗一車分の買付方を依頼し、その代金に充当するため本件手形を同人に交付したところ、右訴外人は、同年三月初頃右買付のため羅臼の武内宏方に至り、同人に対し被告から助宗一車分の買付を依頼されて来た旨を話してそのの買付方を依頼したところ、同人がこれを承諾したので、右訴外人は同人に対し本件手形を右買付代金に充当するために譲渡したこと、しかるに右武内はこれを銀行で割引を受けながら、自己の事業資金に流用し、助宗一車分の買付をしなかつたものであること、従つて右佐々木もまた被告のための助宗一車分の買付をすることができず、同月末頃被告の要求により、武内に対し右手形の返還を請求し、その頃被告佐々木間の買付依頼契約は解除されたものであることが認められる。
右認定の事実関係によれば、右武内宏は、自己が助宗一車の買付をなし、これを佐々木三市郎に送付するのでなければ、右佐々木は被告に対しこれを引渡すことができず、従つて被告は右佐々木に対し本件手形の支払請求を拒むことができる事情にあることを知つて、本件手形の裏書譲渡を受けながら右買付をなさず、右手形を換金のうえこれをあえて自己の事業資金に流用し、その結果右佐々木をして被告に対し右買付義務を果すことを不可能ならしめたものであるから、右武内は手形法第七七条、第一七条但書の「債務者ヲ害スルコトヲ知リテ手形ヲ取得シタル」ものに該当するものというべきである。
従つて被告は、右佐々木に対して対抗しうる抗弁を右武内に対しても主張しうるものであるところ、前記認定の被告佐々木間の買付契約の解除により被告の右佐々木に対する本件手形債務はその原因関係の消滅により支払うことを要しないところのものであるから被告は右武内に対してもまた右支払いを拒むことのできるものである。
しかして、原告は本件手形を右武内から期限後裏書の方法により譲渡を受けたものであることは、前記事実のとおりであるから、右譲渡は指名債権譲渡の効力を有するに過ぎず、従つて被告は右武内に対して有する一切の抗弁を原告に対しても主張しうるところのものである。よつて被告の右武内に対する本件手形の支払いを拒絶することのできる抗弁は、これを原告に対してもまた主張しうるところである。
結局被告の抗弁は理由があつて、これを採用すべきものである。(中平健吉)